ライブの本編が終わり、アーティストがステージを去った後に始まるアンコール。客席から声を上げたり、手拍子をしたりして再登場を求める光景は、多くのライブでおなじみとなっています。
ところが今、アンコールを求めずに座って待っている観客は許されるのかという問題が、X(旧Twitter)で大きな議論を呼んでいます。
発端となったのは、2026年10月12日に投稿された、アンコールに参加しない観客への不満を訴えるポストです。
「アンコールは観客とアーティストが一緒につくるもの」という意見がある一方、「楽しみ方を他人に強制するべきではない」という反論も続出。さらに、2015年に西川貴教さんが語ったアンコールへの考え方にも、再び注目が集まっています。
今回の論争は、単に手拍子をするかどうかという話ではありません。アンコールは観客が求めて初めて成立するものなのか、それともライブの一部として楽しんでよいものなのか。 それぞれの主張と過去の事例を整理します。
アンコールをしない観客への不満がXで拡散
2026年10月12日、Xに投稿されたライブのアンコールに関する意見が話題となりました。
投稿者は、さまざまなライブでアンコール中に何もせず座っている観客を見かけると指摘。声を出すのが恥ずかしいなら手拍子だけでもしてほしいと訴え、アンコールを求める行動をしないまま再登場を楽しむことに疑問を投げかけました。
特に注目されたのが、アンコールを求める気持ちがないなら帰ってほしいという趣旨の発言です。
この投稿は数百万回規模で閲覧され、賛否さまざまな意見が寄せられています。
投稿者の主張は、単に「全員が声を出すべき」というものではありません。自分からアンコールを求めようとしないのに、ほかの観客の行動によって実現したアンコールを当然のように楽しむ姿勢に、不満を感じていると読み取れます。
一方で、座っている人にもそれぞれ事情があるとして、強い表現に反発する声も上がりました。
アンコールを求めない観客は「便乗」なのか
今回の論争で特に意見が分かれているのが、アンコールを求める行動をしない観客をどう捉えるかという点です。
アンコールに積極的な人からすれば、アーティストにもう一度出てきてほしいという気持ちを伝えるため、声を出したり手を叩いたりしているわけです。その隣でスマートフォンを操作したり、友人と談笑したりしている人を見ると、不満を感じることもあるでしょう。
実際にXでは、アンコールを求める行動をしている人がいるからこそ、ほかの観客も再登場を楽しめるのではないかという趣旨の意見が見られました。
また、過去のライブで、必死にアンコールを求めていた観客を周囲の人が笑っていたにもかかわらず、アーティストが再登場すると、その人たちも大喜びしていたという体験談も投稿されています。
こうした意見の背景にあるのは、アンコールを求める行動と、それによって得られる楽しみとの関係です。
ただし、実際にアンコールが行われた理由が観客の声援だったのか、あらかじめ予定されていた演出だったのかは、公演によって異なります。 声を出した人だけのおかげでアンコールが実現したと、すべてのライブについて断定することはできません。
それでも、アンコールを求めるために積極的に行動している観客からすれば、何もせずに待っている人との温度差が気になるのは理解できる話です。
アンコールは強制ではないという反論も
一方、アンコールに参加するかどうかは個人の自由だという意見も数多く見られます。
特に多いのが、チケットを購入してライブに参加している以上、楽しみ方まで周囲の観客に決められる筋合いはないという主張です。
ライブでは、声を出して盛り上がる人もいれば、静かに音楽を楽しむ人もいます。長時間立ち続けたことで疲れてしまい、アンコールの時間を休憩に充てる人もいるでしょう。
また、体調や身体的な事情から立ち続けることが難しい人もいます。実際に今回の投稿に関連して、足の不調があるため長時間の起立が難しいという声も確認されています。
こうした事情を踏まえれば、座っているという行動だけで、アンコールを望んでいないと判断することには無理があります。
さらに、Xではファン同士が独自のルールを押しつけることで、新しくライブに参加する人が居心地の悪さを感じるのではないかという指摘もありました。
アンコールを大切にする文化と、観客それぞれの楽しみ方を尊重する考え方。この2つが対立していることも、今回の論争が広がった理由の一つと考えられます。
西川貴教も2015年にアンコールについて発言
今回の論争に関連して、再び注目されているのが、T.M.Revolutionの西川貴教さんによる過去の発言です。
西川さんは2015年6月、ライブのアンコールについて自身の考えをTwitter(現在のX)に投稿し、大きな反響を呼びました。
きっかけとなったとみられるのは、同年6月28日に開催された佐賀公演です。
当時の報道によると、この公演ではアンコールを求める声が十分に盛り上がらず、座っている観客も少なくなかったとされています。西川さんは一度アンコールを行わない意向を示し、公演がそのまま終了しかけたという経緯が報じられました。
その後、西川さんはアンコールについて、チケット代の対象となる本編とは異なり、観客からさらに求められ、それにアーティストが応えるものだという考えを説明しています。
そして、アンコールの本質について、次のように表現しました。
「更に求められ、それに応える心と心の呼応がアンコールです」
つまり、西川さんにとってアンコールとは、観客が求めるからこそ成立する、アーティストとの双方向のやり取りだったのです。
また、もっと聴きたいと思うのであれば、その気持ちを強く、大きく伝えてほしいとも呼びかけていました。
この考え方は、今回の論争でアンコールへの積極的な参加を求める人たちの主張とも重なります。
西川貴教はアンコールの強制も否定していた
ただし、西川さんの発言には、見落としてはいけない部分があります。
それは、アンコールを求めること自体は観客の義務ではないという点です。
西川さんは当時、観客にアンコールを強要する意図はないと説明しています。アーティストがアンコールに応じる義務もなければ、観客がアンコールを求める義務もないという立場でした。
これは、アンコールをしない観客を一方的に批判する考え方とは、必ずしも一致しません。
西川さんが問題としていたのは、アンコールが当然に行われるものだと考え、再登場したアーティストを前にしてもスマートフォンを操作したり、座って談笑したりするような態度でした。
アンコールは当然ではない。しかし、観客が求めるかどうかも自由である。
この両方を認めている点が、西川さんのアンコールに対する考え方の特徴といえるでしょう。
齋藤飛鳥はアンコール不要派だった
アンコールに関する考え方は、アーティストによっても異なります。
2024年12月16日深夜に放送されたテレビ朝日系「ハマスカ放送部」では、ライブのアンコール演出が必要かどうかについて議論が行われました。
番組に出演した元乃木坂46の齋藤飛鳥さんは、アンコールを不要とする立場を表明しています。
齋藤さんは、ファンとしては少しでも長く音楽を聴けるとうれしいと理解を示しながらも、遠方から来ている観客のことなどを考え、アーティストもファンも早く帰った方がよいという趣旨の意見を述べました。
また、ラッパーの呂布カルマさんもアンコール不要派として、本編だけで観客を十分に満足させたいという考えを示しています。
一方、お笑い芸人の永野さんはアンコールを支持。アーティストとファンが気持ちを交わす時間として、その意義を語りました。
このように、アンコールそのものが必要かどうかについても、音楽に関わる人たちの間で意見が分かれています。
今回の論争は、観客の参加方法だけでなく、アンコールという仕組み自体を考えるきっかけにもなっているようです。
アンコールをしないライブもある
そもそも、すべてのアーティストがアンコールを行っているわけではありません。
今回の議論に関連して、Xでは、アンコールを設けずに本編だけで公演を完結させるアーティストについても言及されています。
例えば、SUPER BEAVERやTHE SPELLBOUNDについて、アンコールを挟まずに公演を進める方針に触れた投稿がありました。ただし、これらのアーティストがすべての公演で同じ形式を採用しているかどうかまでは確認できていません。
また、DECO*27さんのライブについて、アンコールを行わないと事前に案内されていたという体験談も投稿されています。
一方、ゴールデンボンバーについては、アンコールを求める観客の声を模した音声を流す演出があったという投稿も見られました。
いずれも今回の論争に関連して寄せられた体験談であり、公演ごとの詳細な演出をすべて確認できたわけではありません。
ただ、こうした意見からも、アンコールの位置づけがアーティストや公演によって異なることがうかがえます。
Xではアンコールを巡ってさまざまな意見
今回の投稿をきっかけに、Xでは賛成、反対の両方から多くの意見が寄せられています。
特に目立つのは、アンコールを当たり前だと思うことへの違和感と、他人に参加を強制することへの反発です。
アンコールには参加するべきという意見
アンコールへの参加を重視する人たちからは、次のような趣旨の声が見られました。
アンコールを見たくて声を出している人がいるのに、隣でスマートフォンを触っている人を見ると納得できない。
アンコールは最初から約束されているものではない。もう一度出てきてほしいなら、その気持ちを伝えるべきではないか。
声を出せない事情があるなら仕方ないが、最初から何もしないで待っている姿勢には違和感がある。
必死にアンコールを求めている人を笑っていた観客が、再登場した途端に喜んでいたという経験がある。
これらの意見に共通しているのは、アンコールを観客が積極的に求めるものとして捉えている点です。
また、単に声を出さない人というより、アンコールを求める人の行動を軽視しながら、その結果だけを楽しむ人に対する不満が強いこともうかがえます。
アンコールは自由という意見
反対に、アンコールへの参加を強制することに疑問を示す声もあります。
ライブの楽しみ方は人それぞれ。周囲の観客が参加方法を決めるべきではない。
長時間のライブで疲れている人もいる。座っているだけでアンコールを望んでいないと判断するのはおかしい。
アンコールまで含めて公演が組まれている場合もあるのだから、声を出さなければ見られないとは限らない。
ファン同士で独自のマナーを押しつけると、新しく参加する人がライブを楽しみにくくなる。
また、アンコールを待つ時間そのものが苦手で、それなら本編に曲をまとめてほしいという意見も見られました。
特に、声援や手拍子をしない人に対して「帰ってほしい」とまで要求することには、強い反発が寄せられています。
どちらの意見も理解できるという声
一方、アンコールは大切にしたいものの、参加の仕方まで強制する必要はないという意見もあります。
例えば、声を出す人も、手拍子だけの人も、休みながら参加する人も、それぞれの楽しみ方として尊重したいという考え方です。
実際にXでは、静かに楽しむことを否定する必要はないものの、スマートフォンを触ったり、周囲と談笑したりするだけの態度には違和感があるという声も見られました。
つまり、問題はアンコールに参加しないこと自体ではなく、ライブやアーティストに向き合う姿勢なのではないかという見方です。
なお、ここで紹介したSNSの反応は、確認できた投稿の趣旨を要約したものであり、原文の引用ではありません。
アンコールは観客の声がなければ成立しないのか
今回の議論を考えるうえで重要なのが、アンコールの仕組みです。
本来、アンコールは本編終了後に観客が追加の演奏を求め、それにアーティストが応えるという形で行われます。
しかし、現在のライブでは、アンコールで披露する楽曲や演出が事前に準備されている場合もあります。
そのため、アンコールを求める声が小さかったとしても、予定どおり再登場する公演は考えられます。
一方、西川貴教さんの2015年の佐賀公演のように、観客の反応がアンコールの実施に影響したと報じられた事例もあります。
つまり、アンコールが観客の声によって実現するかどうかは、アーティストや公演の方針によって異なるということです。
ただし、あらかじめアンコールが予定されていたとしても、観客が求める気持ちを示すことに意味がないとは限りません。
演奏を楽しんだ気持ちを伝える行為として、手拍子や声援を大切にしている観客もいるからです。
反対に、声を出さないからといって、その人がライブに満足していないとも限りません。
今回の論争が簡単に決着しないのは、同じアンコールでも、そこに求める意味が人によって異なるためでしょう。
まとめ
2026年10月12日のXへの投稿をきっかけに、ライブのアンコールに参加しない観客を巡る議論が広がっています。
アンコールを積極的に求める人からすれば、何もせずに再登場を待ち、当然のように楽しむ姿勢に納得できない部分があるのでしょう。一方、静かに楽しみたい人や身体的な事情がある人にとっては、参加を求められること自体が負担になる場合もあります。
2015年に西川貴教さんが語ったように、アンコールをアーティストと観客の双方向のやり取りとして大切にする考え方があります。同時に、西川さん自身もアンコールを求めることは観客の義務ではないと説明していました。
アンコールは当たり前ではない。しかし、アンコールを求める行動も義務ではない。
この2つは、必ずしも矛盾するものではありません。
何もせずに待つ観客に不満を抱く気持ちと、参加方法を強制されたくないという気持ち。その両方が存在するからこそ、アンコールのあり方については今後も意見が分かれそうです。
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