平日のパチンコ店に行くと、多くの高齢者が台に向かっている光景を目にします。その姿を見て、「家に閉じこもっているよりはいい」「手や頭を使うから、ボケ防止になるのではないか」と考える人もいるでしょう。
一方で、長時間同じ台に座り、大切な年金を失っているのであれば、単なる暇つぶしでは済みません。高齢者にとって、パチンコは健康的な趣味なのでしょうか。それとも、依存症や生活破綻につながる危険な遊びなのでしょうか。
この問題は、「パチンコは善か悪か」という二択では整理できません。重要なのは、パチンコによって本人の生活がどう変わっているかです。
パチンコはボケ防止になるのか
パチンコでは、画面や盤面を見て、演出を判断し、出玉や使った金額を確認します。パチスロであれば、機種の仕組みを覚えたり、状況に応じて続けるかやめるかを考えたりすることもあります。
そのため、何もせず一日中ぼんやり過ごすことと比べれば、視覚や注意力を使う活動ではあります。実際、高齢者のギャンブル参加と認知機能の関係を調べた観察研究では、ギャンブルの頻度が高い人ほど、全般的な認知機能や記憶、実行機能の成績が高かったという関連も報告されています。
ただし、この研究から「ギャンブルをすれば認知機能が良くなる」とは言えません。もともと外出できる体力や判断力があり、金銭的にも余裕のある高齢者ほど、ギャンブルを続けられている可能性があるからです。原因と結果が逆であることも考えられます。
さらに、同じ研究では、問題のあるギャンブル行動が強い人ほど、認知機能検査の成績が低いという関連も確認されています。つまり、適度な遊びと、制御できなくなったギャンブルは分けて考えなければなりません。
現時点では、パチンコによって認知症を予防できると証明した信頼性の高い研究は確認できません。したがって、「パチンコはボケ防止になる」という言い方は根拠が足りません。
脳を使うことと認知症予防は別の問題
パチンコをしている最中に頭を使うこと自体は否定できません。しかし、ある活動で一時的に注意力や判断力を使うことと、その活動によって将来の認知症を防げることは別の話です。
いわゆる脳トレゲームについても、複数の研究をまとめた分析では、ほかの活動と比較して全般的な認知機能を明確に改善するとは確認されませんでした。ゲームが無意味ということではありませんが、特定の遊びだけで認知症を防げるほど、話は単純ではありません。
認知機能の低下を防ぐ方法としては、身体活動、生活習慣病の管理、社会とのつながり、栄養状態などを総合的に考える必要があります。厚生労働省も、高齢者の健康維持には運動、栄養、社会参加などが重要だとしています。
パチンコで頭を使っていたとしても、長時間座り続け、食事が乱れ、人との会話が減り、生活費を失っているのであれば、全体として健康的とは言いにくいでしょう。
高齢者がパチンコをする利点
パチンコの効果を過大評価するべきではありませんが、高齢者にとってまったく価値がないとも言い切れません。特に大きいのは、外出する理由になることです。
仕事を退職し、家族との会話も少なくなった高齢者にとって、毎日出かける場所があることは重要です。着替えて家を出る、店まで歩く、顔見知りの店員や客と挨拶する、帰りに買い物をするといった行動は、家に閉じこもって誰とも会わない生活より、活動量や刺激を増やす可能性があります。
また、本人が純粋に楽しいと感じ、決めた予算の中で遊べているのであれば、生活の満足感につながることもあります。趣味は、必ずしも生産的である必要はありません。
囲碁でなければならない理由も、読書でなければならない理由もありません。本人が楽しみ、生活を壊していないのであれば、パチンコだからという理由だけで家族が取り上げるのも乱暴です。
ただし、パチンコ店では一人で台に向かう時間が長く、会話がほとんど発生しないこともあります。店内に人が大勢いることと、人間関係を持っていることは同じではありません。
「毎日外出しているから孤立していない」とは限らないのです。
高齢者にもギャンブル依存症は起こる
ギャンブル依存症というと、若い人や働き盛りの人を想像するかもしれません。しかし、高齢者にも依存は起こります。
高齢期には、退職による役割の喪失、配偶者や友人との死別、孤独、身体機能の低下、自由時間の増加などが重なります。高齢者のギャンブル問題に関する研究では、孤独や社会的孤立、生活上の喪失、経済的問題、うつや不安などが、問題のあるギャンブルと関係する要因として挙げられています。
つまり、高齢者がパチンコに通う理由は、単にギャンブルが好きだからとは限りません。
家にいても話す相手がいない。必要とされている実感がない。寂しい時間を埋めたい。
そうした空白を、パチンコの音や光、当たるかもしれないという期待で埋めている場合もあります。
この状態でパチンコだけを取り上げても、根本にある孤独や喪失感は残ります。すると、別のギャンブルや酒、買い物などに対象が移る可能性もあります。
年金生活ではパチンコの損失を取り戻しにくい
高齢者のギャンブルで特に深刻なのが、収入を増やす手段が限られていることです。現役世代であれば、損失を給与や臨時収入で補える場合があります。
しかし、年金を主な収入としている人が生活費を失うと、翌月に働いて取り戻すことは簡単ではありません。貯金も、基本的には増やすためではなく、残りの人生で使うためのお金です。
数万円の負けでも、それが毎月続けば、食費、医療費、家賃、介護費用に影響します。
令和5年度の国の調査では、過去1年間にギャンブル等依存が疑われた人がギャンブルに使った金額は、1か月当たりの中央値で6万円でした。また、男性では最もお金を使ったギャンブルとして、パチンコが43.4%、パチスロが24.5%を占めています。
これは高齢者だけの数字ではありません。ただ、固定収入で暮らす高齢者にとって、月6万円の支出が重いことは容易に想像できます。
認知機能の低下がパチンコの問題を悪化させる可能性
「認知症予防のためにパチンコをする」という説明には、もう一つ注意すべき点があります。認知機能が低下し始めた人にとって、ギャンブルはむしろ危険になる場合があるからです。
認知症では、記憶力だけでなく、計画を立てる能力、損得を判断する能力、衝動を抑える能力なども低下することがあります。その結果、いくら負けたか分からなくなる、前日の負けを忘れる、生活費まで使う、家族に隠れてお金を下ろすといった問題が起こる可能性があります。
認知症とギャンブル障害の関係を扱った研究でも、判断力や抑制力の低下によって、ギャンブル行動が悪化する危険性が指摘されています。
以前は予算を守れていた人が、急に大金を使うようになった場合、それを単なる依存症と決めつけるべきではありません。認知機能の低下、うつ状態、薬の影響などが隠れている可能性もあります。
パチンコが趣味から問題行動に変わる境界
パチンコをしているという事実だけで、依存症とは判断できません。週に何回行くか、いくら使うかだけでも決まりません。
重要なのは、自分で決めた範囲を守れているか、生活に悪影響が出ているかです。たとえば、次のような状態が増えている場合は注意が必要です。
生活費や医療費に手をつける。
家族に使った金額を隠す。
負けを取り戻すために、予定より長く遊ぶ。
パチンコに行けないと強くイライラする。
借金や立て替えを求める。
食事、入浴、通院、服薬などがおろそかになる。
以前より明らかに使う金額が増える。
負けた額や遊んだ時間を覚えていない。
家族が止めようとすると、激しく怒る。
これらは「パチンコが好き」という範囲を超え、本人が行動を制御できなくなっている兆候かもしれません。
高齢者がパチンコを続けるための条件
高齢者のパチンコを一律に禁止する必要はありません。ただし、健康的な趣味として続けるには、少なくともいくつかの条件が必要です。
まず、使ってよい金額を事前に決め、その金額を超えないことです。勝った金を次回の軍資金にする方式では、実際にいくら使っているのか分からなくなりやすいため、月単位で収支を記録したほうが安全です。
次に、生活費や貯金と、遊びに使うお金を分ける必要があります。キャッシュカードや大金を持って店に行けば、負けた後に追加で引き出す余地が生まれます。
また、パチンコだけが唯一の外出先、唯一の楽しみにならないことも重要です。散歩、買い物、家族との食事、地域活動など、金銭を賭けない活動も残しておくべきです。
パチンコをやめた瞬間に、一日の予定も人とのつながりもすべて消える状態は危険です。
家族がパチンコをやめさせる際の注意点
親がパチンコに通っていると、家族は「お金がもったいない」「今すぐやめてほしい」と思うでしょう。しかし、頭ごなしに禁止すると、本人が金額や行動を隠すようになることがあります。
まず確認すべきなのは、パチンコが本人にとって何の役割を果たしているかです。
娯楽なのか。外出の理由なのか。人に会える場所なのか。寂しさから逃げる手段なのか。お金を増やすための勝負だと思っているのか。
理由によって、必要な対策は変わります。
外出先がないのであれば、別の居場所が必要です。孤独が原因であれば、人とのつながりが必要です。認知機能の低下が疑われるのであれば、医療機関への相談が必要です。
依存が強いのであれば、家族だけで管理しようとせず、地域の精神保健福祉センターや依存症相談窓口などにつなげる必要があります。
高齢者のパチンコはボケ防止にはならない
高齢者にとって、パチンコが完全に悪だとは言いません。予算を守り、生活に影響を出さず、娯楽として遊べている人まで一律に否定する必要はないでしょう。
しかし、パチンコを「ボケ防止になるから続けたほうがいい」と評価するのは無理があります。画面を見て判断したり、台の仕組みを覚えたりすることと、認知症を予防することは別です。
外出する理由になる、刺激を受けられる、人と顔を合わせられるといった利点も、パチンコでなければ得られないものではありません。散歩、買い物、ゲーム、将棋、地域活動などでも代替できます。
一方で、金銭を失う危険、負けを取り戻そうとする心理、生活費まで使ってしまう依存性は、パチンコ特有の問題です。年金生活では、失った金を働いて補うことも簡単ではありません。
したがって、高齢者のパチンコを健康的な活動として勧めるべきではありません。本人が自己管理できる範囲で遊ぶ自由はありますが、それはあくまで娯楽です。
パチンコが生活の一部に収まっているなら、必ずしも悪ではありません。しかし、孤独や暇を埋める唯一の手段になり、金や時間を制御できなくなっているなら、それはもう趣味ではありません。
高齢者に必要なのは、パチンコを続ける理由を「ボケ防止」にすり替えることではなく、金を失わずに外へ出て、人と関わり、頭と体を使える生活を作ることです。
おススメ商品
こちら、私が長年使ってるおすすめ商品です。
手に取りやすい価格で十分な音質・ノイズキャンセリング・バッテリー↓↓
AnkerのこのモバイルバッテリーはPSE技術基準に適合。
安心して使いやすい定番品です。↓↓
箱買いして家に常備しておけば、特茶を気兼ねなく飲めます。
QOLが上がります。ガチです。↓↓
気になる話題を音声で楽しむならAudible
Audibleは、本を音声で楽しめるAmazonのオーディオブックサービスです。
小説、教養書、ビジネス書、エッセイなど幅広い作品があり、通勤中や散歩中、家事中にも利用しやすいのが特徴です。
ニュースや雑学を読んだあとに、「もう少し深く知りたい」と思ったテーマを音声で楽しめるのは、Audibleならではの使いやすさです。
無料体験が用意されている場合もあるため、気になる方は確認してみてください。
